マル子とペケ子の茶飲み話
2016年5月19日 エッセイ
「ゴールデンウイークこんにちは。
ペケ子さんは どうせ自宅待機でしょうと思って、
遊びにきて上げました」
マル子がペケ子のボロアパートに来た。
「そう言うマル子も暇なのかな?」
「予定はありますよ。幼児教育の勉強会がありますから。
でもほら、ペケ子さんの友達は私しか居ないでしょうし」
「失敬だな。大切な友達が居る」
ペケ子は胸を張る。
「それは良かった」
「テレビ君だ」
ペケ子が指差すところに、安物のテレビが陽気な音を立てていた。
新番組の番宣が流れている。
「まっ、とりあえずは ようこそ、マル子with手みやげ」
ペケ子はいそいそと茶を入れた。
二人は、しばし渋茶を飲みながら、手みやげの大福を賞味した。
その間も、お友達のテレビ君は、にぎやかだ。
「四月三十日から『トットテレビ』って言う番組が始まるのですね。
若かりし頃の黒柳徹子の話みたいです。
あら、渥美清を中村獅童が演じるんですって」
マル子は、テレビ君に反応した。
「……。目が細いというところしか共通点が……」
「見当たりませんね。キャスティングで冒険する番組なのでしょうか」
二人は、同時に腕を組んで、うなった。
どうやら、意見が一致したらしい。
「おお、『夢で会いましょう』が出てくるのかな。
そういえば、今月の歌に渥美清も出ていたな」
ペケ子は渥美清に反応した。
「『夢で会いましょう』ですか。なんか聞いたことがあります」
「大ヒットしたバラエティ番組だね。
『今月の歌』というコーナーがあって、
坂本九の『上を向いて歩こう』とか、
梓みちよ『こんにちは赤ちゃん』とか、
ジェリー藤尾の『遠くへ行きたい』とか、
けっこうなヒット曲が生まれている。
渥美清も『ひとりもの』という曲を歌ったな。
ひと?り?もの? ひと?り?もの?
やも?め?ぐらしの部屋?は?」
突然歌いだしたペケ子だった。
哀愁漂う歌声に、マル子は そっと涙を抑えつつ、
「渥美清って歌えたんですか」と言った。
「何を言う。
ふうてんの寅さんでおなじみの
「男はつらいよ」の主題歌を歌っているじゃあないか。
元になったといわれる『泣いてたまるか』の主題曲だって
歌っているぞ。
俳優の歌ってえのは、歌手の歌とは違う種類のクオリティーがあるよね。
高倉健の『唐獅子牡丹』とか、
石原裕次郎の『赤いハンカチ』とかさ」
「あ?、はいはい。分かる気がします。たとえが古いですけど」
「西田敏行『もしもピアノが弾けたなら』
中村雅俊『俺たちの旅』
『ホタテのロックンロール』『マツケンサンバ』」
「最後の二つは、ちょっと違うんじゃないかと……」
マル子の異議をスルーして、ペケ子は話を戻した。
「『今月の歌』で、何と言っても印象に残るのは、
丸山明宏の「あいつ」だね。
五拍子の曲なんよ。
黒い全身タイツを着たダンサーたちが、
歌う丸山明宏の周りで、妖しい踊りを踊っていたんよ」
「ネットで見られますかしら。
ちょっと検索。
ああ、丸山明宏って、今の美輪明宏ですね。
あれっ? 『あいつ』じゃなくて、
『あいつのためのスキャットによる音頭』
というのなら あるみたいです。
これかしら。
うわあ! そうみたいです。
妖しい踊りを踊ってます。
五拍子ですう。
黒の全身タイツじゃなくて、江戸時代の庶民風衣装ですけど。
なんじゃこりゃ」
マル子が画面を見てのけぞった。
「ふん、おかしいな。私の記憶と違う。
別バージョンの衣装はともかく、題名を変えたんかなあ」
「ペケ子さん。1963年の曲ですけど。
記憶って……。
えっ? 年はいくつなんですか」
「ふんふん、大福は美味しいな」
ペケ子さんは どうせ自宅待機でしょうと思って、
遊びにきて上げました」
マル子がペケ子のボロアパートに来た。
「そう言うマル子も暇なのかな?」
「予定はありますよ。幼児教育の勉強会がありますから。
でもほら、ペケ子さんの友達は私しか居ないでしょうし」
「失敬だな。大切な友達が居る」
ペケ子は胸を張る。
「それは良かった」
「テレビ君だ」
ペケ子が指差すところに、安物のテレビが陽気な音を立てていた。
新番組の番宣が流れている。
「まっ、とりあえずは ようこそ、マル子with手みやげ」
ペケ子はいそいそと茶を入れた。
二人は、しばし渋茶を飲みながら、手みやげの大福を賞味した。
その間も、お友達のテレビ君は、にぎやかだ。
「四月三十日から『トットテレビ』って言う番組が始まるのですね。
若かりし頃の黒柳徹子の話みたいです。
あら、渥美清を中村獅童が演じるんですって」
マル子は、テレビ君に反応した。
「……。目が細いというところしか共通点が……」
「見当たりませんね。キャスティングで冒険する番組なのでしょうか」
二人は、同時に腕を組んで、うなった。
どうやら、意見が一致したらしい。
「おお、『夢で会いましょう』が出てくるのかな。
そういえば、今月の歌に渥美清も出ていたな」
ペケ子は渥美清に反応した。
「『夢で会いましょう』ですか。なんか聞いたことがあります」
「大ヒットしたバラエティ番組だね。
『今月の歌』というコーナーがあって、
坂本九の『上を向いて歩こう』とか、
梓みちよ『こんにちは赤ちゃん』とか、
ジェリー藤尾の『遠くへ行きたい』とか、
けっこうなヒット曲が生まれている。
渥美清も『ひとりもの』という曲を歌ったな。
ひと?り?もの? ひと?り?もの?
やも?め?ぐらしの部屋?は?」
突然歌いだしたペケ子だった。
哀愁漂う歌声に、マル子は そっと涙を抑えつつ、
「渥美清って歌えたんですか」と言った。
「何を言う。
ふうてんの寅さんでおなじみの
「男はつらいよ」の主題歌を歌っているじゃあないか。
元になったといわれる『泣いてたまるか』の主題曲だって
歌っているぞ。
俳優の歌ってえのは、歌手の歌とは違う種類のクオリティーがあるよね。
高倉健の『唐獅子牡丹』とか、
石原裕次郎の『赤いハンカチ』とかさ」
「あ?、はいはい。分かる気がします。たとえが古いですけど」
「西田敏行『もしもピアノが弾けたなら』
中村雅俊『俺たちの旅』
『ホタテのロックンロール』『マツケンサンバ』」
「最後の二つは、ちょっと違うんじゃないかと……」
マル子の異議をスルーして、ペケ子は話を戻した。
「『今月の歌』で、何と言っても印象に残るのは、
丸山明宏の「あいつ」だね。
五拍子の曲なんよ。
黒い全身タイツを着たダンサーたちが、
歌う丸山明宏の周りで、妖しい踊りを踊っていたんよ」
「ネットで見られますかしら。
ちょっと検索。
ああ、丸山明宏って、今の美輪明宏ですね。
あれっ? 『あいつ』じゃなくて、
『あいつのためのスキャットによる音頭』
というのなら あるみたいです。
これかしら。
うわあ! そうみたいです。
妖しい踊りを踊ってます。
五拍子ですう。
黒の全身タイツじゃなくて、江戸時代の庶民風衣装ですけど。
なんじゃこりゃ」
マル子が画面を見てのけぞった。
「ふん、おかしいな。私の記憶と違う。
別バージョンの衣装はともかく、題名を変えたんかなあ」
「ペケ子さん。1963年の曲ですけど。
記憶って……。
えっ? 年はいくつなんですか」
「ふんふん、大福は美味しいな」
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